ベトナム製造業の成長により生じる労働市場の課題

人材雇用の専門家によると、将来的に製造業が成長することで、労働市場にはチャンスと問題の両方がもたらされるとのことです。

キャリアリンク・ベトナムのCEOは、「技術刷新を加速化するためのアクションを起こさなければ、発展途上にある他の東南アジア諸国へ海外投資を行う起業家へのアピールポイントを失ってしまう可能性がある」と話します。

「企業が行う機械や機材への投資努力というものは総じて、マンパワーの質を高めることで重ねていかなければならない」と越前谷氏。

中高年齢層管理職の人材紹介に特化した求人サイト、マイケルペイジ・ベトナムのタマラ・ブーンストラ取締役は、政府の政策により多くの製造工場が中国からベトナムに移転してきていると話しています。

また、問題は、製造業セクターの需要に見合う労働力をベトナムで確保することにあると続けました。

専門人材紹介企業のロバートウォルターズが行った年俸調査によると、今年は投資レベルが上がり、新たな市場が参入したことで、特に製造業セクターの人材雇用市場で年俸の上昇が見られます。

昨年はベトナムへの多国籍企業の参入が増え、既存施設の拡大が行われたため、製造業セクターの成長が続きました。

市場の情勢が良ければ、この傾向は2018年まで続くとされています。

多くの企業で地元の人材や海外で得たスキルを持つ人材を採用する利点が認識されつつあり、国内の求職者や、海外から戻ってくるベトナム人の人材需要が高くなっています。

管理職の雇用に関しても、英語が堪能で、海外での労働経験がある人材が求められています。

ロバートウォルターズの調査報告では「市場に見合った労働者を確保するために、私たちは採用責任者に自社のEVP(雇用主からの価値提案)を向上させ、提供可能なキャリアアップの機会について明確に示すことを薦めています。雇用主は十分な研修の機会を設け、定期的に成果を確認するべきだ」とされています。

また、キャリアリンクグループが行った調査「製造業の労働市場-インダストリー4.0時代のチャンスと課題」では、回答に応じた200の企業の55パーセントが、今年は労働者が不足していたとされています。

そのうち35パーセントは有能な労働者が不足しており、応募率が低いことが依然として課題だと答えています。

この調査によると、製造企業は若い労働者の獲得に苦戦しているようです。その理由としてあげられるのは、「若い求職者のキャリア志向」や「企業ブランド力の低さ」などです。

「そのため、企業の32パーセントが状況打破を目指し、企業ブランド力を高めるためのプランを共有した」としています。

仕事への思いがあったとしても、製造業従事者は、製造業ならではの理由で仕事を辞めてしまいます。

給料・補償・福利厚生への不満、勤務地が市街地から離れた郊外にあること、(不衛生な空気、騒音など)不健康な職場環境などが、退職理由の上位5つに入っているようです。

勤務地の遠さが雇用の妨げとなっていることについては、39パーセントの企業が同意しています。

解決策

同調査では、規模的にも質的にも、マンパワー不足を緩和するために、複数の製造業が協力体制をとっていることが分かりました。

人材雇用に必要なカリキュラムの改善、または作成のために研修施設を共有するのは一般的でしょう。

また、後輩や部下のためのOJTや、社内教育または現任訓練は製造業では一般的で、製造業で現在働いている、または就職活動をしている調査対象者3,200人のうち43パーセント以上と、83パーセントの企業からの回答を得ています。

一方で、オンライン研修は珍しく、職場で採用されているとしたのは企業の5パーセント、また従業員の4パーセントほどしかいませんでした。

研修項目については、企業の64パーセントが、ソフトスキルや外国語よりもハードスキルを優先としていると回答しています。

また、企業がその職種の予備知識を備えている人を採用し、その後技術スキル向上のための教育を施すのは一般的であるとされています。

逆に労働者は、積極性や技術知識、規律、学習態度に関して他のスタッフの評価を行います。

全製造工程の30パーセントほどまでオートメーション化していると答えた企業は46パーセントで、30~70パーセントまでオートメーション化が完了していると答えたのは32パーセントであるとする調査結果が出ています。

語学力や、技術知識やスキルの強化による変化について、労働者は積極的な姿勢を見せています。

技術刷新が肉体労働者に及ぼす影響の甚大さを認識しながらも、労働者も企業も「製造業においてオートメーション化は避けられない」という意見は一致しています。