ベトナムニュース

ベトナムでは、雇用サービスなどの公式ルートを利用する求職者のシェアが伸びてきてはいますが、実際は、そういったサービスの利用者はまだ少数派です。ベトナム統計局(GSO)によると、国内ではほとんどの人が個人的な知り合いを通じて就職するようです。

GSOのデータについて国際労働機関(ILO)が行った調査では、若年層のおよそ40%が、友人や家族の口利きで仕事に就いているということが分かっています。

求職者は、学歴や養成レベルが高いほど雇用サービスを利用する傾向にあると、ILOベトナムの労働経済学者、バレンティーナ・バルクッチ氏は述べています。

また、雇用サービスの強化は、ベトナムが2020年にASEANの議長国となるという観点からも重要です。

ILOは、ベトナムが雇用サービス条約として知られるILO第88号条約を批准したことで、労働市場の発展において重要な一歩を踏み出しているとしています。

その理由は、雇用サービスが労働力の効果的な発展および統合、活用を促すからです。

そして雇用サービス業者は、その達成のため直接顧客である2つのグループ、労働者(適切な雇用先を探すためのサポートを行う)と雇用者(適切な労働者を探すためのサポートを行う)にサービスを提供します。つまり、雇用サービスは求職者と求人に関する2つの情報ネットワークの接点に位置することとなります。

労働需要と供給の中核となるのが雇用サービスなのです。

「ベトナムは経済改革の真っただ中にあり、雇用サービスの促進を図るこの条約を批准することは重要なステップです。」とバルクッチ氏は述べています。

また、「産業化や、地域および世界市場への融合、さらに外国への直接投資の増加により、労働市場に変化がもたらされ、雇用の機会や、資格・スキルの必要性がより公的なものになってきています。それに伴い、求職者への求人マッチングの提供手段も、より効果的にアクセスしやすくなること、また、利用者が増えることが求められます」と続けます。

ベトナムのように変革の途にある国では、労働市場の情報は、その市場の発展状況を知るための重要なデータソースでもあります。

雇用サービスは、求職者のプロフィールや、企業が求めている職種、それに伴ったスキルの需要、求職者のプロフィールから分かる就職活動の期間や、なかなか埋まらない職種など、管理データを通じて、膨大な労働市場情報を生み出すことが可能です。

そして、こういったデータはすべて、「企業が求めるスキルとは?」「求職者は自分の能力に合った仕事を見つけているのか?」「長期の仕事を必要としている求職者は誰か?」「労働市場に不足している、需要のあるスキルは何か?」というような疑問の答えを見つけるのに役立ちます。

バルクッチ氏は「こういった疑問の答えが、政策立案者にとって重要な情報となる」と話します。

「労働市場データは、雇用政策や技能開発政策の定期的改定のために活用することができます。より包括的な社会・強い経済を目指して、労働者が労働市場の変化に適応し、企業が必要とする技能を手に入れることを目的としています。」

ILO第88号条約では、雇用サービスの目的の一つは職業および地域の流動性を高めることであるとしています。経済・文化の統合を目指すASEAN共同体ビジョン2025という観点から、スキルのある労働力が『途切れなく流れること』を含め、多くの地域で労働力の開放が増加するとASEANは予測します。

「条約の批准は国内の雇用サービスを強化するための重要な一歩ですが、まだまだ先は長いです」と、バルクッチ氏。けれども、政策政綱が条約に沿って確実に行われるよう、ILOがベトナム政府や労働者、企業組織をサポートするという方針を改めて確約しています。